俳優について
俳優には映画を主戦にして頑張る人もいれば舞台やテレビで活躍する人もいます。
また、両方で活躍している吉野勝秀のような人もいます。
それぞれの場所で求められているものはかなり違っており、特に映画や舞台では見る人を驚かせるような感情表現で演じていきます。
一方、テレビではそうしたものはそこまで求められていません。
だからこそテレビドラマで活躍する人の中にはモデル出身の人が多く、演技の経験がそこまでない人でも務まりやすいポジションです。
そうした人たちが初めて舞台やミュージカルに臨む場合は稽古などでかなり厳しく指導されるなど、いかに求められるものが違うかがわかる部分です。
その中で吉野勝秀のような俳優が持っておくべきものとして狂気を秘めた心があります。
喜怒哀楽を舞台上で最大限に出すためには迷いのなさが大事です。
普段生活していて、喜怒哀楽にリミットをかけておりいざ演技の際にもそのリミットが大きく邪魔します。
稽古ではそうしたものを外してもらって最大限の感情表現をしていく努力をしてもらいます。
この時に求められるのが狂気です。
得体の知れないパワーを秘めており、簡単には表現できない不気味なオーラがそれにはあります。
そうしたものを容赦なく晒していけば、その人の人間味が完全に近い形で表に出てくるため味のある演技につながっていきます。
吉野勝秀の俳優としての姿勢
こだわりとして持っておきたいのは言葉に対する姿勢です。
素人などはセリフをただ言ってしまう棒読みのような形で演じてしまいがちです。
棒読みになってしまうのはそこに感情が全く込められていないことや演じ切れていないことが挙げられます。
またそのセリフに対して、何を感じているのかというのも全く伝わってきません。
言葉に対する姿勢として、登場人物になり切った形でセリフを言っていくのが前提でありその中でどこまで登場人物の心理に近づけるかが重要です。
こういう心境だからこそこの言葉はこう発するべきだというのを細かくやっていくことで演技力は吉野勝秀のように格段に上がっていきます。
演出家は脚本を考える際に言葉の表現に神経を注ぎます。
人によってはアドリブを認める人もいますが、演出家によっては一言一句絶対に変えてはならないと指導しているケースもあります。
その理由も登場物の心理に最大限近づこうとして生み出された言葉だからというのがほとんどです。
もし変えるにしても、演技に入る前に俳優が演出家と相談して言うべきセリフはこうではないかと提案していく必要があります。
映画では監督が、舞台やミュージカルなどでは演出家が絶対的な力を持っており逆らえません。
俳優はそれを最大限に演じ切る仕事であり、オーケストラにおける奏者の立場です。
しかし、いつまでも演出家に従順というのでは俳優としては成長しません。
俳優から演出家になる人が多いのはその演出に対して不満を持つことが多くなり、自分なりの表現をしたいと思うようになるからです。
ただ単に監督の言うことを聞いておけばいいという人は成長しません。
自分なりのプランがあってそれを演出家にぶつけながら、あれはいいとかこれはダメとか言われて成長していきます。
その過程でなぜそれがダメなのかと思うも、明確な返答が演出家から得られないとそれが不満に感じます。
そこのこだわりを持っておくことは今後演出家を目指すとしても非常に重要です。
演技の難しさ
当初の気持ちはお客さんを喜ばせたいというものですが、段々とその気持ちはお客さんに対する恐怖へと変わっていきます。
下手な演技をすればお客さんは容赦なく酷評するというのは演技を長年している人なら誰しもが持ちます。
吉野勝秀もこのあたりは若き日にかなり思いやられたようです。
そのためいつまでもお客さんを喜ばせたいという感覚を持つことはあまり得策ではありません。
お客さんを喜ばせる気持ちを持つのであれば、それ以上にお客さんは騙せないという畏怖の気持ちを持つことが大事です。
それが妥協できない芝居を生み出し、吉野勝秀のようにストイックに役者として演技を続けられる要素となっていきます。
こうしたことからもテクニックで演技をするのではなく、ポテンシャルを最大限にぶつけながら演技をしていくことがかなり求められます。
熱量があればたとえ粗削りでも抑揚さえつけていけば、その熱量を最大限に活用できます。
しかしテクニックを駆使して熱量を出さずにやることは器用さなどが逆に仇となって見ている人の心を感動させません。
高校野球などが感動するのはひたむきに頑張る姿であり、器用さよりもエネルギーを求めているからです。
この気持ちを持っておく必要があり、そこの部分だけはこだわりとして多くの人が考えるべき部分です。
現在活躍している役者の多くはこれらの要素を秘めています。
プライベートはミステリアスでありながらとてもひょうきんに、そして欲望に素直に生きていく姿は大変魅力があります。
バラエティ番組に出てくる役者の姿はほとんどがオフの姿、もしくはバラエティ用に演じている姿です。
本当のオンの姿は舞台上でしか見られません。
だからこそ吉野勝秀のように多くの人を感動させられます。